のあるくらし
「炎のあるくらし」

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薪ストーブ、暖炉
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聞き手
 店内を見渡しますと、ヨーロッパ製の薪ストーブが多いわけなんですけども、ヨーロッパのライフスタイルにある薪ストーブとは、どういうものなんでしょうか。
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薪ストーブ、ヨツール、F100  暖炉、薪ストーブは、そんなにメインでは使われていないんです。ヨーロッパの方は、生活のスタイルは変えないで、いいものは残すくらしをしています。火をとても楽しんでいます。
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F 100
ヨツール
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聞き手
 いいものを残していくというのは、ヨーロッパの町並みを見てもわかりますよね。

 そうですよね。
 日本の場合、古いものを壊して新しいものを造ることに価値があったようですけども、ヨーロッパではいいものを残して大事にしていくっていうことは感じます。

聞き手
 ノルウェー製の薪ストーブがたくさんありますけども、大立目さん、ノルウェーに行かれてどういう体験をされて来たんですか。

 最初に行った時は25年位前なんですが、最初、正直とっても退屈しました。遊ぶところがなかったですし、田舎っていうか、ノルウェーでもとても北の方に行ったんですけども、バスでまる一日走っても信号機がひとつもない、そんなところを通って行ったんです。

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暖炉、オーダーメード、オーダーメイド  そこへ行った時に、現地の暖炉を扱っている会社の社長さんのお宅へ招かれたんですね。6月末から7月初めの一番いい気候の時、ちょっと寒かったんですが、伺った時に、玄関のアプローチにキャンドルを灯してくれて、そして、リビングに入ったら暖炉に火を入れてくれて、「あっ、火っていうのは、お客様を、人をもてなすものだなぁ」って、とってもあたたかい気持ちになったんです。
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聞き手
 人が文明を手に入れたのは、火を操れるようになったから、という人もいますけれども、火っていうのはロマンを語ったりですね、そういう使われ方もされますが、火の魅力っていうのは、どういうところでしょうか。

 やはり、人の気持ちを大きく動かすものだと思います。
 小さな火であれば、レストランで食事をする時のキャンドル、それがいろんな意味で人の気持ちを楽しくします。キャンプファイヤーをしたり、男同志でキャンプして、焚き火して、呑みながら語り合う、そういう魅力があります。人の生活と、ずーっと、かかわって来たものだと思います。

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ノルウェーの冬景色 聞き手
 ノルウェーの話しに戻りますと、ノルウェーってとっても寒いところですよね、その中に火のある生活、逆にふわっとあたたかい風景を想像してしまいますが、直に行かれたノルウェーはあたたかかったですか。

 夏に行くと、とても陽が長くて、夜相当遅くまで明るいですが、逆に冬に行くと、ほとんど真っ暗で、それだけに、たぶん私たち北東北で暮らしている人間よりも、陽射しであるとか、春の緑に対しての憧れはすごく強いと思います。
 ノルウェーは、ここ100年位前までは、独立国ではなくて、ヨーロッパの中でも最貧国といわれたところだったんです。ところが、油田が出まして、それで国がとても豊かになって、電気をよその国へ売っているんです。ただ、それだけ石油があって、電気があっても、暖炉をとっても大事にしていますし、火を楽しんでいます。その辺は、いいものは価値を認めて長く使おうっていう姿勢が感じられます。

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聞き手
 ヨーロッパのライフスタイルを、エコロジーやスローライフというものから心の豊かさまで話しをされる方がいますけれども、これまで日本が歩んで来たライフスタイルとノルウェーをはじめ、ヨーロッパの昔のものを大事にしていこう、伝統を大事にしていこうという考え方というのは、これから、どんどん日本でも大事になっていくような気がするんですけども、その辺りはいかがでしょうか。
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ノルウェーの冬景色  そうですね。ただ向こうのくらしは、お父さんのくらし、おじいさんのくらし、それを受け継いでいるんですね。私たちでも、二世代前の生活っていうのは非常にエコでしたし、環境に優しく、周りに優しく、無駄をしない。
 戦後、日本はあまりにも変わり過ぎたんですね。ヨーロッパの方は、価値観、良いものは変えないで来たんですけど、私たちも、日本でも、岩手は特に、いいくらしはいっぱいあったはずで、ちょっと前の二世代くらい前の生活を考えると、ヨーロッパに近いんじゃないかなって思います。
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聞き手
 ヨーロッパの生活、ライフスタイルをこれから日本に取り入れていこうとすると、日本式のスローな生活っていうのは、岩手においては、どんどん広がっていくような感覚をもっているんですけれど、大立目さんはいかがですか。

 ええ、私も若いときっていうか、ノルウェー、イギリスなど行って、向こうの生活に憧れた時代もあったんですが、よく考えてみると岩手にはそういうものがちゃんとあるんですね。日本の場合、全国、岩手だろうが、九州だろうが、みんな地方都市、同じような生活スタイルへ変化していったと思うんですが、よく見ると違うところいっぱいあるんですね。岩手は岩手のくらし方がある。岩手にはとっても豊かな資源があります。ですから、ヨーロッパの生活には憧れましたけれど、私たちのつい最近の生活、二世代くらい前までの生活に、その良さがすごくあって、幸いなことに岩手では十分に残っているんですね。ですから、ヨーロッパのいいところを見習って、私たちの先輩たちがやったいいものと両方を残していって、大事にしていければいいと思っています。

聞き手
 仕事ではありますけれども、岩手暖炉に来るお客様との交流をすることによって、大立目さんの考え方、見てきたもの、山との付き合い方、そういったものが、どんどん広がっているように見えるんですがいかがでしょうか。

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 ずいぶん変わりました。
 いろんなお客様とお会いして、お話を聞いて、私自身薪ストーブを使ったことでも変わりました。共通しているのは、皆さん楽しそうに暮らしているんですね。私自身薪ストーブが好きで、ストーブを使って楽しいってことで、この仕事を始めて今でもやっているんですけど、人を動かす原動力は楽しさだと思うんです。
 環境、エコ、いろんなことを言われる時代になりましたが、人って楽しく暮らせると周りに優しくできるんですね。そのことが結果的には環境に良くなりますし、石油、原子力、いろんなものがありますが、確かに無くては生活できないものではありますけれど、少しずつ減らすこと、いくらでも環境に良いことをするっていうことは一人一人できることだと思います。それと、今話しました自分が楽しく、気持ち良く暮らすっていうことが、ほかのことに対してに優しくなれる、これがエコの原点じゃないかなって思います。
薪ストーブ、F3、ヨツール  
F 3
ヨツール
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聞き手
 楽しく無ければ継続できない、ということですね。
 灯油、石油、そういうものではなくて、電気も使わない。薪を使って暖をとる。今でしたらまっ先に、環境問題とかエコとか考える発想になるんですが、そうではなくて、炎があるくらしが楽しいんだ、楽しく暮らしているんだ、そのことを大立目さんは強調していました。
 最終回は岩手の財産と過ごす、どうぞお楽しみに。
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